中國駐在歴19年、日本通運・廣田靖さんが語る中國の商環境と「中歐班列」

2019-05-07 20:13  CRI

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聞き手:星和明 構成:王小燕

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 日本物流大手・日本通運東アジアブロック地域副総括兼経営戦略室長の廣田靖さんにお話を伺います。ビジネス最前線、それも相互連結が強調される一帯一路構想の中で、物流の最前線にいるベテランとして感じたことをめぐり、星和明アナが4月26日に廣田さんに北京で話を聞いてきました。

 「一帯一路」イニシアティブの構築においては、インフラの相互連結がキーワードの一つに挙げられています。中でも、2011年に重慶とドイツ・デュイスブルクを結ぶ線路の開通で幕開けとなった、中國・歐州定期貨物鉄道「中歐班列」(チャイナ・レールウェー・エクスプレス)が最近、腳光を浴びています。海上輸送、航空輸送に次ぐ第3の輸送モードとしてのポテンシャルが見込まれています。運行本數も當初の年間17本から2018年には6300本にまで増え、同年末までの累計では1萬2937本に達しました。

 物流の世界で大きなうねりを作り出したこの「中歐班列」を、日係物流會社としてどう受け止め、またどう行動に踏み出したのか、日通國際物流(中國)有限公司の廣田靖副総裁兼経営戦略室長にお話を伺いました。

◆200拠點ある中國 鉄道輸送が急拡大中

ーーまずは、日本通運の中國ビジネスの概要をご紹介ください。

 日本通運グループは1981年に北京に駐在員事務所を開設して以來、今年で38年になります。現在、中國は約200拠點、5500人の従業員を有しています。もともと規制業種でしたが、中國國內の需要の拡大とWTO加盟後の市場開放により、現在、日本通運のほぼすべての業務が中國で展開されています。國際フォワーディングに國內のディストリビューション、倉庫も含みます。中でも、鉄道を使った國際輸送が3年ぐらい前から急に延びています。

ーー中國市場は禦社ではどのように位置づけられていますか。

 中國は世界一の人口を抱えた國ですし、地方都市もどんどん富裕層が増え、いわゆる地方都市や都市部の格差もどんどん減ってくるのかなと思っています。まだまだ中國國內の需要が旺盛です。それが國家の考える輸出型経済から內需型経済にしていこうということが著実に実現されているということを、われわれがこの國で、この地で仕事をしている者としては、ひしひし感じています。

 後は、國外から輸入をして、中國の中で販売するということも著実に増加しています。保護主義反対、自由主義奨勵の象徴的な行事は、去年から毎年行われている「中國國際輸入博」です。輸入や內需の拡大は、我點にとっては國際間フォワーディング、プラス國內、あるいは純粋な國內、こういったものに力點を置いていくことが必要になると思っています。

◆中歐班列で可能になった「畫期的な輸送」

ーー2011年に開通した中國・歐州定期貨物列車「中歐班列」には、日通は早くから注目しているようですね。

 「中歐班列」というのは、もともとブランド名がなくて、そのずっと前の鉄道輸送の話をしますと、海外から來た海上コンテナは連雲港あたりに揚げられた後、港にはある鉄道の引込み線に乗せて一本一本、(新疆の)アラシャンコウ(阿拉山口)まで輸送されます。今度はカザフスタンと中國とで、鉄道の幅が違うんですね。広軌と標準軌で、(コンテナ)一本一本を載せかえていかなければなりません。逆に言いますと、たまらないと歐州に行かない、いつ著くか分からないので、サプライチェーンの主役にもなれない。

 ところが、2011年に重慶から、とりあえず臺車を41両以上、50両以下であれば、もう待つこともないし、向こう側で41台の貨車が待っていて、いけばすぐ積んで出してくる。これが「ブロックトレーン」(同じコンテナ貨車が同一の仕向地まで輸送するための編成)という話ですね。

 そうすることによって、リードタイムが読めるので、サプライチェーンとしても使える。ということが、2011年に重慶とデュイスブルクを結ぶ最初の「中歐班列」でした。

 中歐班列というブランド名は、2016年から統一ブランドとして使用されたもので、以前は「チャイナ・ランド・ブリッジ」という呼び名でした。

ーー日通はこの「中央班列」を生かして、去年、輸送試験まで行ったそうですが…

 はい。日本の経済産業省の委託による「チャイナ・ランド・ブリッジ」の利活用推進に向けたハード・ソフト面の改善のための調查に基づく一環として実施しました。鉄道輸送で日係企業がメリットの享受をできるかという不安や疑問を明らかにしていくために実施したものです。去年一年間かけて、14ルートで実験をしていました。これはコンテナ一本一本で出した実験です。そのうち、歐州から中國へもってくるものをさらに足を伸ばして、日本にもっていくと、こういったものを実証実験しています。

 そういう一本ずつの試験とは別に、去年12月に、西安の駅で41本(のコンテナ)を連ねた「日通ブロックトレーン」の実証試験が行われました。西安からアラシャンコウ(阿拉山口)経由でデュイスブルクまでに15日間で到著しました。

 こうした試験の実施を受け、去年10月から今年3月までに上海、デュッセルドルフと東京でそれぞれシンポジウムが開かれました。

ーーどのような手ごたえがありましたか。

 我點が実際にやっていますので、お客様に対する受け答えや説得力がありました。課題もあるが大きなメリットもありました。そういう実際の話をすると、日本のお客様、歐州のお客様からの引き合いに対するタイムリーな回答が可能になり、すぐにトライアルをしたいというお客様も増えているのが現狀です。

ーー「ブロックトレーン」という輸送方式に対して、どのように議論されていましたか。

 參加者は皆、相當興味をもっています。まずは、コンテナ一本一本ではなく、大量に輸送ができたこと。そして、スピードも船より速くなる。飛行機にはかないませんが、比較的速くなる。畫期的な輸送手段だという認識をきっちり持つことができました。とくに自動車、電気、精密機器、もともと日本通運グループのお客様の中には、國際輸送に関しては、自動車、電気、精密機器が大きな割合を佔めています。それもあるのかなと思いました。自動車、電気、精密機器関連のお客様から大きな引き合いをいただきました。歐州側からの引き合いもありました。

◆鉄道輸送がサプライチェーンの主役に?!

ーー「中歐班列」は一帯一路のシンボル的要素もあります。物流企業としてこの構想をどう見ていますか。

 「一帯一路」は鉄道だけではありませんが、物流會社の立場としましては、新しいサービスを市場に提供して、お客様に対して航空便・船便という二者択一から、新しい輸送モードとして、三者択一をご提供できるというのは非常にありがたい話です。

 また、もう少し細かな話をしますと、中國と歐州の輸送ルートは、沿海部の都市同士なら海上輸送が費用的にもリードタイム的にも良いですが、重慶のような內陸部の都市と大型船が著かない歐州の港や東歐との連結は、リードタイム的には鉄道のほうがずっと早いし、費用は結果的にあまり変わらない。場合によっては安くなるかもしれません。今後、そういった部分では、鉄道輸送がサプライチェーンの主役になっていくということが期待されています。

ーー習近平國家主席が第2回「一帯一路」國際協力サミットフォーラムの開幕式で行った基調講演の中で、相互連結や鉄道整備の重要性についても言及していましたが、こうした発言をどう受け止めていますか。

 二つあると思います。つまり、中國の國內の鉄道網とゲートウェーから歐州あるいは中央アジアを結ぶ鉄道網の二つの面です。

 中國と歐州、または中央アジアを結ぶ鉄道網というのは、中國だけの力ではできません。沿線國家の皆様の力が必要です。「一帯一路」によって、中國の利益だけではなく、沿線國家ならびに周辺國家なりが、さらに栄えていくということでもって、インフラを増強する。あるいはトレーシングをもっときちんとする。特に、その帰り便ですね。歐州、中央アジアから中國に來る、あるいはそこを経由して、台灣、韓國、日本というルートを我點は物流會社として、一緒になって構築していきたいなと思っています。

 中國國內の鉄道輸送網も期待されていますし、更に沿線諸國の発展と合せて、我點は「一帯一路」に関しては大きな期待をしています。

ーー最後に、物流企業の視點から、「一帯一路」をより豊かなものにしていく上でのご提言をお聞かせください。

 本當に切望したいことは一つあります。それは、ポーランドにある積み替えのターミナルであるマラシェビッチの積み替えというのがキーワードなんですね。マラシェビッチというのは、シベリア・ランドブリッジでくるものも、二連浩特、満州裏、アラシャンコウ(阿拉山口)、ホルゴスから歐州へ入る場合、全部マラシェビッチ経由なんですよ。

 マラシェビッチにおける鉄道の積み替え能力の限界が、いわゆる「中央班列」の限界になるということを非常に危懼しています。「何年か後にはもう処理能力が何倍にもなりますよ」という青寫真がきっちり見えるようにして頂けると、我點もお客様に対して、「SCM(サプライチェーン・マネジメント)の主役になれますよ。何も心配いりませんよ。どうぞうちを使ってください」(と言うことができる)。やはり、「一帯一路」の構想をより太くしていく、ボトルネックをなくしていくというのが、我點物流會社の切望していることです。

(聞き手=星和明、文責=王小燕、寫真&動畫=劉叡)

【プロフィール】

廣田靖(ひろた・やすし)さん

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日本通運株式會社東アジアブロック地域副総括 兼 経営戦略室長
1964年生まれ 1988年に日本通運入社 
1992~99年   珠海勤務 
2004~2008年   上海勤務        
2011~2012年   広州勤務      
2012年~      現在上海勤務  中國駐在歴 累計19年  
國際フォワーディング、倉庫配送、自動車部品輸送の現場を経験。

現在、東アジアの経営戦略部門の責任者  

 この番組をお聞きになってのご意見やご感想をぜひお聞かせください。メールアドレスはnihao2180@cri.com.cn、お手紙は【郵便番號100040 中國北京市石景山路甲16號中國國際放送局日本語部】もしくは【〒152-8691 東京都目黒郵便局私書箱78號 中國國際放送局東京支局】までにお願いいたします。皆さんからのメールやお便りをお待ちしております。

 

【リンク】
関連番組 【日本が見る「一帯一路」(7)日本通運・廣田副総裁】

【お便り抜粋】

東京都・三輪徳尋さん> 日本通運は、昨年の5月から日本から中國を経由して歐州へ向けての中歐班列による 「クロスボーダー鉄道輸送サービス」を「ユーラシアトレインダイレクト」の名稱で販売して います。リードタイムが短縮され、House Waybillを日通が発行し、発地から著地まで一 貫して輸送責任が明確化されることが特徴の「航空輸送と海上輸送の中間に位置する 第3の輸送モード」と位置付ける商品なのだとか。経済産業省もこの中國歐州間のクロ スボーダー輸送についての調查を日通に委託しているようで、政府の調查報告書なども 刊行されています。  こうした商品が提供できることになった背景には、なにより、迅速な通関や、短時間での 積み替えなどを実現させた各國の連攜にあると思います。このことは、「一帯一路」イニシ アティブによる素晴らしい成果を象徴するものであると思います。 この鉄のラクダキャラバンは、國際的な物流に革命を起こしたとも言え、今後、どのよう に沿線地域に影響をもたらすのか、どこまで物流が活性化するか、中國の內陸部は変わ ってゆくのか、など強い関心事項です。特に、インタビューでもボトルネックと懸念されて いる軌道の違いによるコンテナの積み替えターミナルが物流の増加によって、どれほどに 発展し、その地域にどれほどの大きな経済的な効果をもたらしてくれるのかとても気になっています。

<廣田さんの回等本沿線地域への経済効果を定量的に金額で示すことは難しいですが、11年から現在までの班列の増加率や、開始當初は極めて少なかった歐州発中國向けの物量が、中國の消費者の皆さんの可処分所得の増加にともなう消費の多様化したことや、安定したリードタイムが市場で定著したことから、飛躍的に増加したこと、更に増加を続けていくことを考えると、 インフラ増強による投資が必須となってくると考えています。國境地帯は間違いなく真っ先に恩恵を受けるでしょう。 

 

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10月29日放送分
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