中國共産黨創立100週年 平和的アプローチこそ最大の特徴~歴史學者・石田隆至さんに聞く

2021-08-24 19:28  CRI

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石田隆至さん

【プロフィール】

 1971年大阪生まれ。明治學院大學國際平和研究所研究員。大連理工大學海外招聘研究員を経て、2020 年秋から上海交通大學人文學院副研究員。専門分野:新中國による日本人戦犯への教育改造と裁判、戦後日本の平和運動および中國から帰國した元戦犯による反戦平和運動、脫植民地期のアジアにおける平和外交など。

 中國共産黨創立から100年を迎えた今年、平和研究の視點から中國共産黨の歩んできた歴史を見つめ続けてきた日本の學者がいます。現在は上海交通大學で研究活動を続けている石田隆至さん(50歳)です。

 石田さんは大學院生だった2000年頃から、研究仲間の中國人留學生とともに新中國から帰國した元戦犯に聞き取り調查を行ったのをきっかけに、20年近くにわたってオーラルヒストリーをはじめ、調查、記録、研究を続けてきました。加害者だった日本人戦犯に対する新中國の向き合い方から見えたもの、そこからにじみ出る中國共産黨の平和に対するぶれない姿勢とは何か。8月初め、北京を訪れた石田さんにインタビューしました。

【新中國による日本人戦犯の自己反省教育と裁判とは】

 1950年代初め、新中國は舊ソ連から移送されてきた日本人戦犯、および日本の敗戦後も「皇國復興」を掲げて中國に留まり國民黨とともに共産黨との內戦を戦った舊中國侵略日本軍、あわせて約1100人を遼寧省撫順市、山西省太原市の戦犯管理所に収容しました。約6年にわたる教育改造や取り調べ、裁判を行った結果、ほとんどの人が「認罪」(自身が加害者であり、戦爭中の行為が戦爭犯罪であったことを認識する)し、自身の過ちを深く反省しました。帰國後は「中國帰還者連絡會(中帰連)」を結成し、反戦平和・日中友好をライフワークとして活動を続けました。

 なお、2021年8月現在、存命中の「中帰連」メンバーは5人です。

──石田さんは新中國による日本人戦犯の自己反省教育と裁判について、20年近く研究を深めてきました。その過程で中國共産黨にも興味を持ったようですが……

 私は戦後生まれのごく普通の學生で、日本社會で過ごすなかで、共産黨というものに觸れる機會は特にありませんでした。そうした中、中國から帰國した日本人戦犯達が、自分の過去の過ちを見つめることができたのは、「洗脳された」とか、「命が助かりたいので忖度して共産黨の言いなりになった」とか、いろんなことが言われてきましたが、実際に元戦犯のおじいさん達に會って話を聞いていく中で、決してそういう話ではないなと感じるようになりました。世界の他の戦犯裁判と同じように、罪狀を調べ上げ、死刑や終身刑を科すことで終結させることもできましたが、新中國は戦犯の認識が內側から変わるのを6年もかけて待ち続けていたのです。だとすれば、當時の中國共産黨が何を考えていたのかということを踏まえて研究する必要があると考え、中國共産黨にも関心を持つようになりました。

──たとえば、そうした中で影響を強く受けた方はいましたか。

 帰國した元戦犯たちからもそうですが、同じく2000年前後に山邉悠喜子さんという方から受けた影響も大きかったです。當時はもう70代だった山邉さんは戦後、中國人民解放軍の衛生兵として8年間活動していました。そういう経験から、日本と中國との関係や、あの戦爭に対する見方が、私がそれまで接してきた身近な日本人と全然違っていました。一言でいえば、被害者の立場というか、中國の人たちがどう感じているかということをきちんと踏まえた上で、日本と中國との関係、戦爭の問題、歴史の問題を考えなきゃいけないということを、非常に分かりやすく教えてくれました。

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山邉悠喜子さん近況寫真

 そういう新鮮な驚きと、日本人にこのような影響を與えた中國共産黨とはどのような組織なのかを知ってみたいという思いから、いろいろと調べるようになったのが始まりです。

──これまでの研究を通して知ったことは?

 大きな特徴の一つとして、自分とは異なる存在、時には敵であるような存在とも、いかにして良い関係を作っていくかということを目指している點にあると感じています。

 日本人の戦犯というのは、中國側からすれば、絶対許せない相手ですよね。昔は敵だったわけですし、中國共産黨の人達の中にも、自分の家族とか、地域の人達がひどい目に遭った人もたくさんいます。それにもかかわらず、そういう人達に反省するための環境を作ったというのは、その人たちが変わって、良い関係を作り直すことができるだろうというふうに、そういう信念を持って接していたから、できたことではないかなと思います。

 さらに、新中國の成立後、「共産國家」ということで西側諸國から敵視される時期が続いていました。それに対しても、力で対抗しようという形ではなく、できるだけ良い関係を作るにはどうすればいいだろうかという接し方をしていました。そういう方針は、改革開放以降も基本的に変わってないと私の目には映っています。

 現在も、新型コロナウイルスの発生源をめぐり、中國を敵視しようとしている國點も含めて、世界の人點と一緒に解決していこうとしているのが、今の中國の姿勢だと感じています。

──そういうところも、「人類運命共同體」の共同構築という理念につながった発想と言えるようですね。

 そうですね。歴史を振り返れば、そうした平和的なアプローチは中國共産黨の様點な時期に貫かれていました。

 抗日戦爭の時代には、八路軍は日本人の捕虜に対してきちんとご飯を食べさせたり傷の手當てをしたりして、「いつまでも戦爭を続けると君自身も危ないから」という形で、いろんな配慮をしてきました。そういう影響を受けて、中には、反戦運動というのを八路軍と一緒に行うような人たちも出てきました。

 戦後、日本人戦犯に対しては、「きちんと間違いを反省すれば、いい関係を作って、國際平和を一緒に生み出していけるはずだ」と信じて、6年間、彼らが変わるのを待ち続けたわけです。

 日本と國交正常化交渉をした時にも、戦爭賠償を請求しないというのは、やはり、「これから日本がきちんと戦爭の反省を踏まえた上で、良い関係をつくっていきたい」というメッセージだったというふうに思います。また、舊日本軍が中國に殘した毒ガス兵器という歴史の「負の遺産」についても、中國と日本で共同して、リスクを伴いながらも中國國內で処理することになったというのは、やはり「これから一緒に平和な東アジア、平和な國際環境を作っていきたい」というメッセージだと受け止めています。

 そういう形で、中國共産黨の百年をずっと見ていくと、「人類運命共同體」というメッセージをはっきり言葉にしたのが近年だというだけで、その理念というのはずっと以前からあったように私は考えています。

──最後に、実際に中國で暮らしていて、身近で感じた中國共産黨員の姿は?

 今の日本では、具體的なことは何も知らないまま、中國や中國共産黨について先入観を持っている人が多いのが現実です。私の身の回りにいる中國の學生や市民にも共産黨員がたくさんいますが、彼らは社會や地域への貢獻を一生懸命やっている人達が多いです。災害時はもちろん、普段から困っている方や、年配者、障害者、貧窮者などに対して、獻身的にサポートするような取り組みをしている方もたくさんいます。そういう現実の共産黨員の人達がやっていることを知ると、中國共産黨といっても何も特別な組織ではなくて、日本や他の國にもあるような、普通の市民たちがより暮らしやすい社會を作るための日點の努力をしている場だといえます。こうした現実を具體的に知ってもらうことも、大事なことではないかなと感じます。

(構成:王小燕 寫真提供:石田隆至)

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