【特別寄稿】新年を迎えるにあたりーここ數年の出來事に思う

2021-12-30 13:31  CRI

【特別寄稿】新年を迎えるにあたりーここ數年の出來事に思う

西園寺一晃

東日本國際大學客員教授

北京大學國際関係學院客員教授

公益社団法人日中友好協會顧問

 正に光陰矢の如し、新型コロナと米中対立に翻弄された2021年はあっという間に過ぎ去り、新たな年を迎えます。

世界経済は底入れか 気候変動対応では國際協力進む2021年

 2021年はどのような年であったでしょうか。私には前年と同じく、閉塞感の漂う、混沌としたイメージがあります。良い事もありました。世界経済はまだ不透明さはありますが、最悪の時期は脫し、回復の軌道に乗り、少し光明が見えてきました。

 世界経済の回復をけん引したのは中國です。

 中國は新型コロナを基本的に抑え込み、いち早く経済の復興を果たしました。各國の生産が大きく落ち込む中、サプライチェーンを支えたのは経済の回復を果たした中國でした。

 新型コロナ対策では、國際的な協力、助け合いが進みました。「ワクチン大國」は、ワクチンの不足している発展途上國に、大量のワクチンを提供しました。この點で、中國は賞賛されるべきです。自身、人口14億人を擁する発展途上國ですが、これまでアフリカ、中南米、アジアなど112ヵ國に、5億回分のワクチンを提供しました。どうしても中國を「悪者」にしたい人たちは、中國のワクチンは「質が悪く、効かない」などと誹謗中傷しています。しかし世界保健機構(WHO)で正式に承認され、その効果は中國で証明済み、14億人が証人です。新型コロナ抑え込み率で、中國は世界一です。

 気候変動と溫室効果ガス削減問題でも、國際協力は進みました。激しく対立する米中が、この問題では積極的な協力姿勢を見せました。これは國際社會にとって大変喜ばしい事です。

中國封じ込めも切り離せない相互依存 止まらない中國の成長

 しかし、殘念ながら國際協調を破壊する行為も多點ありました。トランプが露骨に推し進めた「中國叩き」は、バイデン政権によって、基本的に引き継がれました。トランプは、米國単獨で中國叩きを行いましたが、バイデンは同盟國や親米國を引き込んで、國の集団による「中國包囲網」作りをしました。実は、これを先導したのは日本の安倍政権でした。「インド太平洋戦略」は、安倍の発明品です。その後、インド太平洋戦略は「インド太平洋構想」になり、今は「自由で開かれたインド太平洋」となっています。名稱は変わりましたが、その內容と目的は変わっていません。米、日、豪、印が參加する「QUAD(クアッド)」、米、豪、英から成る「AUKUS(オーカス)」は、インド太平洋戦略の延長線上にあり、目的は中國封じ込めです。

 米國などが必死で中國叩きをしましたが、中國経済、中國の貿易はガタガタになったでしょうか。

 中國稅関総署が2021年年初に発表した2020年中日米貿易総額を見てみましょう。

 日米貿易総額:1846.68兆ドル

 中日貿易総額:3175.38兆ドル

 米中貿易総額:5867.21兆ドル

【特別寄稿】新年を迎えるにあたりーここ數年の出來事に思う

 2019年の米中貿易総額は5413.88兆ドルですから、米中経済戦爭下でも、米中貿易は増えているのです。世界の2國間貿易で、一番額が多いのは米中貿易です。それだけ米中の経済的相互依存関係は強いという事です。2020年、米中貿易における米國の貿易赤字は3102億ドルでした。これは、米國の貿易赤字総額の45.5%に當たります。米中貿易総額、米國の対中國貿易赤字は、トランプ、バイデンがあれほど強引に赤字解消に向け、対中制裁を行ったにもかかわらず、ほとんど変わっていません。この傾向は2021年も同じでした。2021年上半期(1‐6月)の數字です。

 中國の輸出入総額:2兆7852億ドル 前年同期比 +37.4%

 うち輸出総額:1兆5183億ドル 同  +38.6%

 うち輸入総額:1兆2668億ドル 同 +36.0%

【特別寄稿】新年を迎えるにあたりーここ數年の出來事に思う

 主要國・地域の中で、これほど増えているところはありません。この中で(2021年上半期)対米貿易を取り出すと以下の通りです。

 中國の対米輸出総額:2529億ドル 前年同期比 +42.6%

 中國の対米輸入総額: 879億ドル 同 +55.5%

【特別寄稿】新年を迎えるにあたりーここ數年の出來事に思う

 これらの數字から何が見えるでしょうか。それは、このグローバル化した時代、人為的に他國の発展を止めたり、貿易を切ったりすることは出來ないという事です。米國自身、必要だから中國から輸入するのです。中國は供給能力があるから輸出し、外貨を稼いでいるのです。これこそウインウインです。この何がいけないのでしょう。今の世界経済は、高度な、そして複雑な競爭、協調、分業から成り立っています。大小、強弱の國は、この中でそれぞれの役割を擔っているのです。どれ1つ欠けても、世界経済という「精密機械」は機能不全に陥ります。

 2020年と2021年の狀況を見ると、皮肉にも、激しく対立する米中の経済的相互依存関係は、切っても切れない深さに達しています。これは今後も変わらないでしょう。経済面では、中國にとって米國は必要であり、それは米國と同じだという事です。

 中國経済の成長、発展は止まっていません。むしろ主要國の中では、トップクラスの成長、発展を維持しています。

米國の「半導體」と中國の「リン酸」 國際分業への対照的な姿勢

 では、米中経済戦爭によって、中國は全くダメージを受けなかったでしょうか。そんなことはありません。

 世界の第1と第2の経済大國が経済戦爭をするのです。お互いに傷つかないはずはありません。中國経済全體では、それほど大きなダメージを受けていませんが、個點の分野、個點の業種は、大きなダメージを受けました。

 例えば半導體です。米中経済戦爭が始まる前、世界の半導體マーケットのシェアで、中國は50%以上を佔めていました。ところが、中國の半導體自給率は10%にも満たなかったのです。中國のハイテク産業の育成と発展の中で、半導體は「アキレス腱」でした。それでも中國は、半導體を米國、韓國などから輸入し、スマホなどを生産し、輸出していました。これでなんら不都合はなかったのです。

 ところが、世界の半導體需要の爆発的増加と、米國による経済制裁などで、中國に充分な半導體が入って來なくなりました。ファーウエイ、テンセント、シャオミーなど、中國の通信関連企業は主力製品の1つであるスマホが正常に生産できなくなりました。さらにカナダは米國と連攜し、ファーウエイの孟晩舟幹部を逮捕し、中國のハイテク産業に打撃を與えました。このような亂暴な攻撃、制裁で、中國のハイテク産業は困りました。まさに「アキレス腱」を衝かれたのです。中國の採るべき道は1つです。それは何とかして半導體の自給率を上げる事です。今中國は官民を挙げて、半導體の自給率向上のため奮闘しています。

 私は、米國は愚かだと思います。短期的に見ると、確かに中國は大きな困難に見舞われました。しかし、中國の財政基盤、技術力からすれば、半導體の自給率向上は充分可能です。一定の時間が必要なだけです。中長期的に見ると、米國は中國という巨大な半導體市場を失う事になり、巨大な損失を被るのです。

 現代の國際分業とは、そう単純なものではないのです。半導體生産には、多くの原料が必要です。その1つが「リン酸」です。これはリン鉱石から黃リンを抽出し、更に黃リンからリン酸を作ります。このリン酸が無ければ、半導體は生産できません。ところがリン酸の世界生産量の70%は中國が佔めているのです。つまり、これまで米國、韓國などは、中國からリン酸を輸入し、半導體を作り、中國に輸出、中國は輸入した半導體でスマホなどを生産し、輸出していたのです。これが分業です。この分業で米國も中國も潤っていました。これを亂暴に分斷、破壊しようというのです。いったい誰が得をするのでしょうか。それより、中國がリン酸の輸出を止めたら、半導體の供給網は壊滅的打撃を受けるでしょう。中國は、米國からこれだけ叩かれながら、リン酸の輸出を止めていません。この面では、中國の方がずっと「大人」です。

中日は協力ウインウインこそがともに利を得る

 改革開放以來、中國の経済発展によって、最も恩恵を受けたのは日本です。ただ日本が一方的に利益を得たわけではありません。日本でよく聞くのは、中國の経済発展は、日本の対中國ODA(政府開発援助)があったからだという話です。

 大平正芳政権が始めたODAは、1979年に始まり、2013年に終了しました。主に低金利の円借款、無償資金協力、技術協力、人材育成の4つから成るこの対中國ODAは、累計3兆7000億円に達し、同時期各國の対中國援助総額の66.9%を佔めました。改革開放初期において、この対中國ODAは、中國経済発展の原動力の1つとなりました。これは事実で、誰も否定することは出來ません。ただこれは問題の半面です。あとの半面は、このODAは、日本に多大な利益をもたらしたという事です。総額3兆7000億円に上るODAの中には3兆1000億円が円借款です。中國はこのODA資金で、日本から多くのものを調達しました。それにより、日本企業は多大な利益を得たのです。さらに、ODAなどを利用した中國は、驚異的発展を遂げました。その結果、中日貿易は飛躍的に伸びたのです。ODAが始まった1979年と2020年の中日貿易総額を比較してみましょう。

 中日貿易総額:66億5400萬ドル→3049億5400萬ドル 46倍

 対中輸出:36億9900萬ドル→1412億4900萬ドル 38倍

【特別寄稿】新年を迎えるにあたりーここ數年の出來事に思う

 この數字を見てわかるように、中國の発展は、日本に多大な利益をもたらしました。日本が中國の発展を支援し、発展した中國経済は日本に巨大な利益をもたらす。これこそ模範的なウインウインの関係だと思います。今や、中國は日本にとって第1の貿易相手國です。中日は対立するのではなく、ウインウインの関係を結べば、雙方に利があるのです。日本には、他國と結び、中國の発展を阻害しようとする人がいます。全く馬鹿げた事で、それは日本が自らを傷つける「自傷行為」にほかなりません。

各國には自らの制度を決める権利がある

 最近の世界の動きを見ていて思うのは、國際社會公認の原則が亂暴に踏みにじられている事です。その1つは「內政不幹渉」の原則です。各國とも、多かれ少なかれ、國內にさまざまな問題、矛盾を抱えています。それらの問題、矛盾をお互いにあれこれと口を出し合ったら、世界は大混亂に陥るでしょう。例えば、米國には根強い黒人差別問題があり、英國にはスコットランドの分離獨立問題があり、日本には非常に複雑な沖縄問題があります。これらは、その國が解決するしかないのです。香港に問題と矛盾があれば、それは中國自身が解決するしかありません。香港は中國の領土であり、中國の內部問題だからです。もし中日首脳會談で、中國の首脳が沖縄問題についてとやかく言えば、內政幹渉です。同じく、日本が香港問題に口を挾めば、明らかな內政幹渉です。

 世界がグローバル化する中で、私たちが學んだのは、「多様化」という問題です。世界は広く、多様です。世界には資本主義國もあれば、社會主義國もあります。宗教が中心の國もありますし、國王が君臨する國もあります。同じ資本主義國でも、政體は多様です。英國には女王がいます。米國は大統領制の議會制民主主義であり、日本は象徴天皇制の議會制民主主義です。どのような制度を選択するかは、その國の國民が決める事です。制度の比べ合い、貶し合いなど、全く不毛な議論です。それぞれの國の國民が、自國に合った制度を選べばよいのです。民主主義のあり方も多様だと思います。民主主義の普遍的原則を踏まえた上で、それぞれの國が、自國に合った民主主義の形態を追及するのは當然です。民主主義制度は、「制度のための制度」ではありません。國民が平等で幸福になる、そのための民主主義です。その意味では、すべての國は、より良い民主主義を求める過程にあります。完璧な民主主義など、何処にも存在しません。いま多くの國で「格差」が問題になっています。富める者と貧する者がいて、その格差は多くの國で拡大しています。このような狀況が存在していては、本當の民主主義國家とは言えません。全ての國は「民主主義発展途上國」なのです。今必要なのは、それぞれの國が謙虛に、他國の良いところを取り入れて、自國に合った、より良い民主主義を確立する努力をする事です。

國際主義こそが人類運命共同體の土臺

 私は新型コロナの爆発的感染拡大を目の當たりにし、感じた事があります。それは、人類が滅亡するとしたら、3つのケースだろうという事です。1つは大規模核戦爭、2つ目は超強力なウイルスの爆発的蔓延、3つ目は激烈な気候変動、自然災害です。これらに対処するには、1つの方法しかありません。それは國際社會が、人類が一致団結し、共同対処する事です。

 いま多くの國で強調されているのは「愛國主義」です。それぞれの國民が自國を愛するのは當然です。しかし、愛國主義の、過度な強調は、往點にして狹隘な民族主義を生み、狹隘な民族主義の行き著く先は排外主義です。いま國際社會で必要なのは國際主義だと思います。愛國主義と國際主義の結合こそ、正しい道です。國際主義無き愛國主義は狹隘な民族主義を生み、愛國主義無き國際主義は外國崇拝を生みやすいのです。この問題を考えるとき、私は天安門に掲げられた2つの標語が頭に浮かびます。向かって左側が「中華人民共和國萬歳」、右側が「世界人民大団結萬歳」です。前者は愛國主義のスローガン、後者は國際主義のスローガンです。これこそ中國社會主義の向かう先だと思います。「一帯一路」にせよ、「人類運命共同體」思想にせよ、國際主義が無ければ実現は出來ません。

日本は米中の協調・協力體制の確立に寄與すべき

 2022年は中日國交正常化50週年の記念すべき年です。ところが、いま中日関係は好転するか、さらに悪化するかの岐路に立っています。外交、安保を米國に頼り、経済は中國と切っても切れない関係にある日本の「最も良い狀況」とは何でしょうか。それは、米中関係が安定し、協調、協力面が拡大する事です。それならば、日本の選択肢は1つです。米中の協調、協力體制確立に寄與する事です。そのためには、一方に與して、一方に対抗するようなスタンスを採らない事、そして米中に対立が起き、矛盾がエスカレートした時は、日本が間に入り調停し、対立と矛盾の緩和を図る事です。

 2022年の中日関係、國際情勢が少しでも平和と安定の方向に行く事を願います。

 

 【プロフィール】

 西園寺 一晃(さいおんじ かずてる)さん

 1942年、政治家・西園寺公一氏の長男として東京都に生まれる。
 1958年、一家で中國に移住し、10年間北京市で過ごす。
 1967年、北京大學経済學部政治経済科卒業。同年、日本に帰國後、朝日新聞社に入社し、同社調查研究室に勤務。
 日本中國友好協會全國本部副理事長、參與、東京都日中友好協會副會長、工學院大學孔子學院學院長などを経て、現在は東日本國際大學客員教授、北京大學國際関係學院客員教授、公益社団法人日中友好協會顧問

ラジオ番組
10月29日放送分
00:00:00/00:00:00
  • ハイウェイ北京<月曜日>の擔當者 劉叡琳_fororder_週一劉睿琳130
  • ハイウェイ北京<火曜日>の擔當者 王小燕&斉鵬_fororder_週二小燕齊鵬130
  • ハイウェイ北京<水曜日>の擔當者 謝東&劉非_fororder_週三謝東劉非130
  • ハイウェイ北京<金曜日>の擔當者 劉叡&孟群_fororder_週四劉睿孟群130
  • ハイウェイ北京<金曜日>の擔當者 任春生_fororder_週五任春生130
  • ハイウェイ北京<週末篇>_fororder_北京直通車週末篇
特集ダイジェスト
最新コラム
新華社_fororder_12日中友好協會_fororder_11人民網日本語版_fororder_10人民中國_fororder_9中國網日本語版_fororder_8東方網日本語版_fororder_7JAPAN online_fororder_5
UTYテレビ山梨_fororder_4中華網日本語版_fororder_3東方通信社_fororder_2中國百科検定_fororder_132959111934859451北京観光_fororder_1
馬玥